2015年12月27日日曜日

解脱-2

《宮前さんの手記を元に、宮前さんの出家後の経緯を記します。》



解脱-2


 麻原は、岡﨑と仲の良かった最古参弟子であるS氏を、「奴は阿含宗のスパイだぞ。」と決めつけ、その後S氏は脱会してしまうということがあった。岡﨑はその出来事から、自分にもスパイの疑念がかかっているのではないかと苦しんだ。独房修行中、「自分はオウムには必要のない存在ではないか」と疑心暗鬼になり、修行を断念することを考えたこともあった。
 その旨を麻原に問い糺(ただ)すと、麻原はキッパリと否定をした。麻原が弟子たちに、被害妄想的な先入観をもち、区別していたのは確かと言える。


 岡﨑は疑念が晴れて、再び修行に励んだ。いつの間にか、長氣法(ヴァヤヴィヤ・クンバカ・プラーナーヤーマ)が一回のサイクルで最高18分(プーラカの保息を7分以上+レーチャカの保息を5分以上)に達するようになった。
 その頃、麻原は岡﨑に、遺書を2通用意するようにと、石井久子を寄越して指示した。石井の説明によると、オウム真理教と両親宛の2通で、もし修行中に死んでも、それはオウムとは関係なく、自身の意思で行う個人的な修行の末の事故であるという内容だった。もとより、麻原とオウムに責任の及ばぬための書面作成といえる。
 岡﨑は、それでも解脱が叶うならば、死んで涅槃しても、本望だ、と覚悟を決して遺書を書く。
 そして、59日目の朝、岡﨑は、ラジャス、タマス、サットヴァの3グナを見たこと(※)で、麻原から成就を認められた。


 麻原は、教団の機関誌「マハーヤーナ No.3」の巻末特集で、岡﨑の解脱について「成就前と今とを比べると、心のプロセスは全く変わっているよ。解脱というものの素晴らしさを、何よりもそういったところに感じるね。これからは、救済という大きな目標に向かって、一層精神してほしいね」と述べた。また、麻原の単行本「マハーヤーナ・スートラ」には、「グルに対する真が無くとも、意志が強ければ修行だけで成就することができる例だろう。実は、彼はグルに対する真がなかったのだ」と、「マハーヤーナ」とは真逆のことを語った。


 これは、上祐に続いて多くの弟子たちが成就を達成したことで、麻原は安堵し、いつまでも人気が高い岡﨑に対する「カルマ落とし」も含めた「マハームドラー」(試練)であり、修行の一環であると、麻原は岡﨑に告げた。麻原によると、前世で既に成就しているものはグル無しでも、自己の意志のみで解脱できるのだという。
 麻原は、時に説法中で岡﨑の秘めた神通力の具体例を示して褒めたり、一番弟子であることを度々話すこともあった。その一方で、麻原は、岡﨑の特殊能力に嫉妬したように、足を引っ張るような仕掛けに嵌めていた。
 麻原は、大師会議や公の場で、岡﨑を褒め上げたり、貶したりしていた。


「解脱」おわり。




※瞑想中に見ることができるとされる、光のようなもの。